介護施設内で暴言や暴力など、キレる高齢者が後を絶ちません。
急に怒鳴られた、急に叩かれたなど、怒り狂う高齢者に恐怖感を感じ、介護業界を去っていく年齢の若い職員も少なくありません。
20代、30代の介護スタッフからしたら、おじいちゃん、おばあちゃん世代の方と接していたら、意味不明にキレられるんですからね。
年配の介護スタッフに「介護施設に居る高齢者は皆さんこんな感じなんですかね?」と聞くと「昔はこんなに怒ってくるご老人も少なかった」と口を揃えて言います。
介護施設内でキレる老人の実態調査したのでご紹介させていただきます。
キレる高齢者に戸惑う介護職員の悲鳴
施設では実際にどのような事態が起こっているのでしょうか?老人にキレられた介護職員の体験談をいくつかご紹介します。
人違いでキレられる
パートタイムで高齢者向けデイサービスのスタッフとして勤務していますが、スタッフは全部で15名程で、その内の1人が私に外見が似ています。
若い人からすると「2人は似てるね」という程度なのですが、高齢者の方からしてみれば、私とその方は同じように見えるらしくよく間違えられるという事がありました。
ある日1人の利用者様からいきなり「昨日約束したやつ何で持ってきてくれないの!」と怒られて、あっけにとられた私は全く意味が分かりません。
前日はお休みをいただいていたし、何か持っていく約束なんてしてないのになんで怒られるのだろうと思いました。
そこで「そんなの知らない」と言うと余計に怒らせてしまうので、とりあえず「ごめんなさい」と謝りましたが、後から聞いたら私に似ていたスタッフさんがその方の好きなお菓子を買っていくという約束をしていたそうです。
高齢の方なのでしょうがないのですが、私としてはかなり嫌な思いをしまいした。
高齢者の喫煙を注意したらキレられた
私が働いている介護施設は自分で基本的な日常生活が送れる人しか入居していない施設で、高齢者の方も寝たきりってわけではありません。
自由に散歩をしたり、退屈しないようにオリエンテーションをしたりしてたんですが、ここで問題になったのが施設内での喫煙です。
今の若い世代の人だと喫煙する人も少なくなってきましたが、高齢者ってタバコ好きな方がとても多いんです。
一応、施設内(高齢者の部屋や食堂や廊下等)はすべて禁煙にしてるのですが、目を盗んで喫煙するんです。
本人はバレてないと思ってるんですが、タバコって煙や臭いが残ってしまうのでバレバレなんですよね。
そこを注意すると吸ってないと言い張るのです。
施設から徒歩30秒ぐらいの場所に喫煙室を設けてあるので、そこで吸って欲しいとお願いしても、私は吸ってない、そんな所にはいかないの一点張りです。
私も注意したくないのですが、これも仕事なので見つける度に注意するしかないんです。
終いにはある時期から「私(高齢者の方自身のことです)が私の金で買ったタバコをどこで吸ってもいいだろう」と開き直るようになり、注意するとキレられるようになりました。
私だけでなく他の介護職員も、この喫煙マナーの悪い高齢者には手を焼いています。
高齢者ということでタバコの火の不始末やタバコの灰をポロポロとこぼしてしまうので防犯的な意味でも大変です。
丁寧過ぎる接し方にキレられる
普段は大人しく穏やかなお爺ちゃんという感じの利用者さんがいらっしゃるのですが、ふとしたことでスイッチが入って罵詈雑言を食らうことがあります。
施設内の移動の際には車椅子を使うのですが、車椅子からベッドに移そうとする時「大丈夫ですか?ここにつかまって下さいね。」と優しく言ったつもりが、「そんなこと言われなくても分かっている!!何も出来ないとバカにしてるのか?」みたいなことを言われてしまいました。
また、「トイレは大丈夫ですか?」と聞いたら、「何度も同じこと聞くな!!」とかしょっちゅうで、頻繁に怒鳴られるので正直心が疲れます。
認知症もいくらか進んできているのもあるのかもしれませんが、思ったように体が動かず、簡単な事を出来ないもどかしさがあるのでしょう。
私の声かけの仕方がまずいのか、丁寧に接した時に、逆にバカにされたと思われてしまい、急にキレ口調で怒鳴られるので困っています。
全ての高齢者に平等に接するという難しさ
私の職場ではデイサービスがメインになり、毎日いらっしゃる方もいれば、週に3回など変則的に来られる方がいたりと、何かと人の入れ替わりがあるフロアです。
とある日、利用し始めて間もない方の担当することになりました。
その方は、なかなか自分から話をするタイプではなく、こちらが他の利用者との間を持つような感じでケアするを形です。
目を離すと孤立しがちになってしまう為、どうしても我々スタッフの接する時間が増えていまいますが、この事が気に障ってしまったのでしょう。
利用者の1人に「どうしてあの人だけ特別扱いなの?」と、凄い剣幕で怒鳴られてしまったのです。
なんとかその場は収めることが出来たものの、フロアミーティングの議題に上がるほどの事態に発展しました。
仲を取り持つというのは慎重にせねばなりません。
高齢者の暴力、暴言は認知症のせいなの?
身辺のお世話させていただく介護職員に対して、何でいきなり怒って暴言を浴びせてくるのでしょうか?
介護スタッフの中には「○○さんは認知症だからしょうがない」とも言われる人もいますが、果たして本当にそれだけなのでしょうか?
認知症やアルツハイマーなどの病気や若い時と比べて体の不自由が露呈している事がキレる原因の一つとも考えられますが、それだけが激高する原因ではないと思います。
警視庁の資料である「高齢者の包括罪種別検挙人員の推移」には、高齢者の刑法犯総数は平成16年36,696件だったのが、平成25年46,226件と25%ほど増加傾向にあり、中でも暴行や障害などの粗暴犯は、平成16年1,714件だったのが、平成25年には5,042件と3倍近く増加しているのです。
こうした背景にあるのは、老人の孤独感からくる心の寂しさなどもあるんじゃないでしょうか?
核家族化が進む日本では、一人暮らしを余儀なくされる老人も少なくありませんし、家族がいても相手にされない、いつも一人でご飯を食べる、介護施設内でも輪に入れない、熟年離婚で高齢で孤立してしまったなど、心の不安感から感情的になってしまうとも考えられるのです。
キレる老人に介護職員はどう対応するべき?
では、キレやすい老人に対して、私たち介護職員はどのように対応すればいいのでしょうか?
急に怒鳴られたり、暴力を振るわれたとしたら、誰だって腹が立ちますし、新人のスタッフなら心折れて辞めてしまう人もいるでしょうが、老人は子供と同じです。
特に団塊世代より年代が上の方は少し傲慢だなと思う事もあると思いますが、まずは寛容な気持ちと態度で接することが望まれます。
もちろんDVなど犯罪を犯すような行為には然るべき対処が必要になりますが、基本的には優しい気持ちと態度がキレやすい高齢者に対する介護職員の心構えです。
そして、キレたことに対処するのではなく、どう怒らさないか?どうすれば気持ちよく過ごせるのか?に焦点を当ててみると、お互いが気持ちの良い関係でいられるようになります。
また、キレやすい入所者さんは「あの人はああゆう人」と自分の中で割り切ってしまうのも、自分を守る方法です。
今一度、自分の行動や対応を見つめ直し、最適なケアをしましょう。